Jerrio’s Cafe ~ 気がつけば音楽が流れていた

 店主 Jerrio の四方山話と愛聴盤紹介。ジャンルの壁を越え、心に残った音楽について語ります。

映画の話

「PERFECT DAYS」ささやかな幸せを拾い集めること

先週の日曜日、映画「PERFECT DAYS」を見に行った。コロナ後はじめての映画館だった。カンヌ映画祭で主演の役所広司がBest Actorを獲得したことで話題の映画だが、上映館はそれほど多くない。梅田に行けば大阪駅のステーションシネマでやってはいるようだが…

「So In Love」にまつわる記憶の連鎖の行先は

前回紹介したカエターノ・ヴェローゾのアルバム『異国の香り ~アメリカン・ソングス』を聞いていて、思い出したことがある。何年か前、土曜の朝の対談番組に、作詞家の松本隆が出演していた時のことだ。 あのぼんやりやさしい語り口で、ヒットを連発しはじ…

イエスタデイ

前回、ボサノヴァ誕生のきっかけとなる曲と、それが収められているジョアン・ジルベルトのファーストアルバムを紹介したが、ジョアンが本当に世界に出たのはそこから5年後、1964年にサックス奏者のスタン・ゲッツと共同名義でリリースしたアルバム 『ゲッツ…

ジョアン・ジルベルトを探して

もう一か月ほど前のことになる。9月の最後の日曜日、封切られたばかりの映画「ジョアン・ジルベルトを探して」を観に行った。春先に雑誌で知って以来、ぜひ封切を観たいと思っていたこの映画のタイトルは、ボサノヴァの父とも呼ばれるジョアン・ジルベルト…

The Rose

先日、NHKの音楽番組『SONGS』が「平井堅オールタイムリクエストベスト」ということだったので、久々に録画して見た。平井堅といえば、最近は様々なタイアップ曲をちょこっと耳にするくらいだけど、少し前にはアルバムも購入して結構聴いていたんだっけ、な…

ブルーに生まれついて

「チェット・ベイカーの音楽には、紛れもない青春の匂いがする。ジャズ・シーンに名を残したミュージシャンは数多いけれど、「青春」というものの息吹をこれほどまで鮮やかに感じさせる人が、ほかにいるだろうか? ベイカーの作り出す音楽には、この人の音色…

月とキャベツ

学生時代に弾いて以来、古びた黒いハードケースの中に入れっぱなしになっていたアコースティックギターを、ちょいと弾いてみようという気になったのは、社会人になって十数年たった頃だった。結婚してからも手許に置いてはいたものの、ベッドの下の見えない…

ストックホルムでワルツを

先週の日曜日、公開を待ちわびていた映画、「ストックホルムでワルツを」を観に行った。原題は「Monica Z」。スウェーデンの歌手、モニカ・ゼタールンドの半生を描いた映画で、僕はそのことを数ヶ月前に音楽情報誌で知った。 モニカ・ゼタールンド・・・懐か…

A HAPPY NEW YEAR

もう三が日も過ぎて、いまさらお正月がらみってのもどうかと思うけど...子供の頃、お正月の朝は一年の内で最も特別な時間だった。とはいっても、いつも目覚めは随分遅かった気がする。前夜の大晦日は夜更かしをしても怒られない唯一の夜で、いつも目をこ…

「戦メリ」はクリスマスソングなのか?

数年前、愛媛の実家に帰っていた時のこと、何かの流れからおふくろと昔話をしていて、僕の学生時代の思い出の品を詰め込んだダンボール箱が、一つ無くなってしまったことが非常に残念だった、という話になった。その時おふくろが、「あ、そうそう...」と…

情熱のピアニズム

先週の日曜日、こればかりは観逃すわけにはいかないと、何とか無理やり隙間をつくって公開されたばかりの映画「情熱のピアニズム」を観にいった。骨形成不全症という病気のためにほとんど歩くこともできず、成人してからも身長は1メートルほどしかなかった…

Calling you

先日あるお店で買い物をしている時、どこからともなく聞こえてきた4つのピアノの音にハッとした。メロディーではなく、ゆったりとした伴奏の4音。たったそれだけで、頭の中にはその後に続く音楽の世界がフワーッと拡がって、少し和らいだ気分になった。そ…

On the Radio

福岡での学生時代、大学の1年か2年の時の話だ。一講目の授業が終わった10時過ぎ、友人のY君と話をしていて、今から映画を観に行こう、という事になった。彼が以前から観たいと言っていた映画「フォクシー・レディ」が、たまたま福岡・天神の「センターシネ…

フラメンコ・フラメンコ

先週の日曜日、ある友人の推奨映画である、スペインの名匠カルロス・サウラ監督の「フラメンコ・フラメンコ」を観に行った。フラメンコといえば「フラメンコギターに合わせ、ドレスを着た女の人がカスタネットを鳴らし踊る」という、恐ろしく画一的なイメー…

感傷的な、あまりに感傷的な

感傷的、英語で言うと"sentimental"という言葉を冠した音楽はたくさんあるが、「感傷的な音楽」と言われて直ぐに頭に浮かぶのは、映画「ニュー・シネマ・パラダイス」の音楽だ。「ニュー・シネマ・パラダイス」は1989年カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞…

サヨナラからはじまること

いよいよ3月。外気はまだまだ冷たいが、今日は日差しが暖かい。卒業シーズンの到来だ。「卒業」といえば、一昨年の夏、卒業30周年ということで開催された高校の同窓会に出席した。450名ほどいた同期生全員が対象の同窓会だった。かつては「同窓会になんか出…

完結!「Two For The Road」

何かの加減で、一度聴いた曲や繰り返し聴いたメロディーの断片が耳から離れなくなることがある。無心で何かをしている時やボーっとしている時に、気がつけばメロディーが耳鳴りのように頭の中を駆け巡っていたり、無意識に口ずさんでいたり、あるいは、夢の…

「てっぱん」と「さびしんぼう」の微妙な関係

NHKの「てっぱん」を録画で見た。DVDレコーダーにうちの奥さんが録画しておいたものだ。先日新しく始まったこの連続テレビ小説は、見慣れた尾道の風景で始まる。同じ瀬戸内海の町を故郷に持つ僕にとって、特別な感慨が湧いてくる。それだけではない。…