Jerrio’s Cafe ~ 気がつけば音楽が流れていた

 店主 Jerrio の四方山話と愛聴盤紹介。ジャンルの壁を越え、心に残った音楽について語ります。

本の話

コロナ禍に沁みる「ファクトフルネス」と独りの音楽

5月の後半。例年であれば、花粉に悩まされる季節がようやく終わって、さわやかな天候を満喫している一時期だが、今年は随分違う印象だった。快適さは早々に退散し、ここ近畿地方では観測史上最も早い梅雨入りを迎えたのだ。 観測史上といっても1951年からと…

The Moon is a Harsh Mistress

前回、アメリカのSF作家、ロバート A. ハインラインの小説 「夏への扉」 を読んで、山下達郎の懐かしい同名の曲がその内容を歌っていたことに気づき、少しばかり驚いたことを書いた。実はこの話には続きがある。 「夏への扉」 で俄然勢いづき、この流れで…

夏への扉

「夏への扉」という小説のタイトルは、これまで何度か目にしたことがあった。それは、読書をテーマにした雑誌の特集記事でのことだったと思うが、日本の小説ではなく外国文学であるということを知ったくらいで、特に触手が動いたわけでも、内容を確認したわ…

今更ながら米原万里

今更ながら米原万里にはまっている。立て続けに4冊読んで、ついに手持ちが無くなった。禁断症状が出る前に早急に補給しなくては...ハアハア... 訃報に接してもう9年。そんなに経った印象は無いのだが、今や日めくりのスピードが確実に加速しているの…

つゆのあとさき

そろそろここ近畿でも梅雨明け宣言が出るのだろうか。昨日まではなんだかはっきりしない感じだったし、出かける時は必ず傘を持って出て、ああ、やっぱりまだ梅雨なんだ、と納得するような天気だった。でも、今朝の天気図を見る限りは、いよいよ梅雨明けかな。…

Never Let Me Go

「わたしを離さないで」 原題 "Never Let Me Go"は、僕が初めて読んだカズオ・イシグロの小説だ。もう読んで4年近くたつが、今だにその内容を思うとき、どこか重苦しく落ち着かない、切なさも混じった独特の気分が戻ってくる。名作である。 静やかで抑制され…

風に寄せて

しかし 僕は かへつて来た おまえのほとりに 草にかくれた小川よ またくりかへして おまへに言ふために だがけふだつて それはやさしいことなのだ と 今週の月曜日、梅雨明け直前の祝日の午後のこと。もうそろそろかな、と思わせるような日差しが少しずつ勢…

少し早めのBARで

この時期にしてはめずらしい2つの台風の影響で大荒れだった一週間が過ぎて、昨日は梅雨の谷間のさわやかな一日だった。すっきり晴れるまでには至らなかったが、少し涼しめの乾燥した空気がとても心地よく、ゆったりとした気分で一日過ごせた。 こんな日の夕…

読書の秋、「錦繍」の秋

「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すらできないことでした。」 蔵王、ダリア園、ドッコ沼、ゴンドラという4つの濁音で始まる名称が呼応し合い、少し毒々しいくらいに鮮やかな錦織…

サウダーデの心

「サウダーデ(Saudade)」というポルトガル語をご存知だろうか。ブラジルでの方言「サウダージ」が楽曲のタイトルとして使われたりしているので、「知ってる」という人も多いだろう。このポルトガル語の意味を正確に表す日本語は無いと言われている。強いて…

「船に乗れ!」にのってしまった

大学時代、オーケストラのサークルで4年間チェロを弾いていた。それまでクラシックとは縁がなかった僕が何故オーケストラなのか・・・ 子供の頃、街の音楽教室に通っていたので、鍵盤楽器には親しんできたし、ポピュラー系の音楽は一通り経験した。その後ギ…

「坂道のアポロン」とビル・エヴァンス

先日、久々に少女マンガのコミック本を買った。この「少女マンガ」という言葉は今も使われているのだろうか。僕の理解は、女性向け漫画雑誌に掲載されたもの、あるいは、女性を主たるターゲットとして描かれたもの、というところだが、「少女」というのがち…