Jerrio’s Cafe ~ 気がつけば音楽が流れていた

 店主 Jerrio の四方山話と愛聴盤紹介。ジャンルの壁を越え、心に残った音楽について語ります。

ラストダンス

キース・ジャレットとチャーリー・ヘイデンの新作デュオアルバム 『Last Dance』 を店頭で目にしたのは、確か6月の終わり頃だった。日本語に訳せば、単に「最後のダンス」なのだが、このアルバムタイトルに少し引っかかるものを感じて、ジャケットに記され…

ペルトのいた街

アルヴォ・ペルトの音楽が生み出す静謐の世界に身をまかせていると、その扉を初めて叩いた日のことが不意に思い出された。それは僕にとって彼の音楽を知るきっかけだっただけではなく、ジャンルを越えた未知の音楽世界に迷い込む楽しさを知るきっかけでもあ…

ヘルシンキでのこと、あれこれ

◆それは、お日柄の良い日だった... ヘルシンキのシンボルといえば、ヘルシンキ大聖堂だろうか。この白亜の教会と、その前方に広がる元老院広場は思った以上に巨大だった。階段に座ってしばしくつろいだあと、建物の正面まで上がってみたが、開いているは…

ヘルシンキは静かな街だった

静かな白夜だった。いや、正確には白夜とは呼べないのかもしれない。フィンランドの夏至祭は6月21日だから、そこからすれば随分日は短くなっているはずだ。それでも欧州大陸の最北の首都であるヘルシンキは、夜の9時を過ぎてもまだ西日が差し、通りすが…

つゆのあとさき

そろそろここ近畿でも梅雨明け宣言が出るのだろうか。昨日まではなんだかはっきりしない感じだったし、出かける時は必ず傘を持って出て、ああ、やっぱりまだ梅雨なんだ、と納得するような天気だった。でも、今朝の天気図を見る限りは、いよいよ梅雨明けかな。…

マイ・ソング、ユア・ソング

透明感溢れるまっすぐなサックス・サウンド。北欧を思わせるひんやりとした感覚。だけど何故か温かい。そんなヤン・ガルバレクの吹くソプラノサックスの登場を、爪弾くように始まるキース・ジャレットのピアノは、完璧なまでにお膳立てする。最初の数小節を…

コーヒーはサンバとともに

あー、コーヒー飲みたい...一日に何度かつぶやいてしまう言葉だが、今の気分はやっぱりサイフォンかな。そう思いながらまずは豆とミルを手にとる。かつては手動のミルでゴリゴリやっていたんだけど、最近は堕落して電動ミルを使い始めた。味気ないけどあ…

サヴァ?/ Ça va?

学生時代は英語が苦手だった。語学自体に興味もなく、高校受験や大学受験のために必要最小限のことを渋々学んでいる感じだった。もちろん英語で会話なんてできる気がしなかったし、その必要性さえ感じていなかった。ましてや、英語以外の言葉なんてどこか別…

ウグイスの贈りもの

ウグイスが鳴いている。もう随分鳴き方もうまくなって、安定した美声を響かせている。春も真っ盛り、ヒノキの花粉も真っ盛り、ついでにPM2.5も真っ盛りだ。近くにウグイスの巣でもあるのか、毎年この時期は、目を閉じ耳を澄ませば、「ホー、ホケキョ」、「ヒ…

新しいものが生まれるとき

あと2日で4月。新年度を迎えるこの季節は、毎年あわただしい。くるものへの準備と、ゆくものの始末。期待と不安、思切と懐旧。そして4月に入れば、あわただしい中にも、新しい風に乗った清々しい香りをほのかに感じ、少しホッとする時を迎える。 そんな感…

東京BOSSA

もう30年近く前の話になるが、大阪駅から環状線で3つ目のJR京橋駅に初めて降り立ったのは、就職のために大阪に来た日の午後だった。ここで京阪電車に乗り換えて、新しい生活をスタートさせる社員寮に向かうのだ。 京阪・京橋駅のホームまでは長いエスカレ…

シンフォニー・セッションズ

寒いので冬眠中、と言いたい気分だ。でも熊じゃないので冬眠しててもおなかは減るし、仕事もあるのでおちおち眠ってもいられない。かくして、寒い中を朝も早くから、ぼそぼそ起きて活動するわけだけど、やはり寒いのは苦手だ。まあ、暑いのも苦手なんだけど…

祝婚歌

2月14日のバレンタインデーが近づいてくると思い出すことがある。残念ながらチョコレートの話ではない。もう随分前のことだが、その日結婚式を挙げた先輩の披露宴で司会を任された苦闘の記憶がよみがえってくるのだ。その先輩Kさんは、大学の先輩であり職場…

ジム・ホールの肖像

ジャズ・ギタリストのジム・ホールが今年の1月に来日することを知ったのは、昨年の秋も深まった頃だった。大阪でのライブは予定されていなかったが、まさにこの週末、1月18日と19日は横浜と東京でベーシストのロン・カーターとライブの予定だった。伝説のデ…

暦の上では大晦日

12月に入ったばかりの頃...あ、そうか、まさに「暦の上ではディセンバー」なんやね、なるほどなるほど~と、まだ「あまちゃん余波」が少し残る中で思っていたんだけど...うかうかしているうちに、「暦の上では大晦日」まで来てしまった。例のごとく忙…

長浜ラーメンと尾崎亜美

先日、義父の七回忌に出席するため、久々に新幹線を使って福岡に帰った。九州新幹線が開通して以降初めての帰省だったが、結局今回も博多駅で降りて在来線を使ったので、直接その恩恵を受けたわけではない。博多から快速で数十分のところにある実家近くにも…

円い話と音楽と

石畳の道が好きだ。古い道だと申し分ないが、新しい道でも細かな工夫が随所に成され、周囲の雰囲気と相まっていい味を出している道であればなおいい。 そういう場所では、普段なら見過ごしそうな本来目立たなくていいものが、しっかりデザインされて景観の中…

TVCMの時代は終わったのか

誰しも忘れられないテレビコマーシャルのひとつやふたつ、あるんじゃないだろうか。僕も18歳で故郷の愛媛を離れるまでは十分にテレビっ子だったので、子供の頃にインパクトを受けたCMは山ほどある。 たとえば、僕の中では「かあさん手作りあんころりー・・・…

「あまちゃん」 熱かったよね

遂に「あまちゃん」が終わってしまった。来週からは「あまちゃん」の無い一日の終わりを迎えることになるわけだけど...ううっ、なんて寂しいんだろう... 平日は、夜ほとんど寝るためだけに家にいるような生活なので、連続もののドラマを見続けるという…

思いがけない瞬間

もうずいぶん前に読んだ「思いがけない涙」という短いエッセイが何故か心に残っている。既に亡くなられたと思うが、当時俳優でエッセイストとしても活躍していた三國一朗さんが書かれたものだった。三國さんはその中で、日頃いかにも「泣かせます」あるいは…

グッバイ・ママ

夏の終わりは、やはり寂しい。別にゆく夏を惜しんでいるわけでもなく、むしろ暑すぎる夏に辟易としていたはずなのに、秋の気配を感じ始めると、何故か寂しさが募ってくる。おまけに週末は雨続きだし、仕事の先はよく見えないし、どんどん歳は取っていくし、…

海から山へ

いつから海よりも山が好きになったのだろう。子供が手を離れて、帰省の理由が子供がらみではなくなった頃からだろうか。山と言っても登山をする山ではない。緑あふれる森や高原も含めた、海と対極を成す広義の山のことだ。 子供の頃は夏といえば海一色だった…

夏はホットにセルメンで

夏バテってわけでもないのに、体がだるい。なんだか喉の調子もよくないし冷房の風で少し寒気を感じるので夏風邪にでもかかり始めているのかな。ということで、昨日は葛根湯を飲んで早々に眠ったので、今日は少しいいかもしれない。実は明日から初めての信州…

TPPと音楽の関係

今日は、今まさに行われているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉のお話から、なーんて言うと堅苦しくて引いてしまうかもしれないけど、その中の僕がちょっと気になっている話題をひとつ。日本では著作者の死後50年の著作権保護期間が、米国同様70年にな…

50年目のトリビュート

ここのところ朝晩涼しくて、冷房を入れずに自然の風だけで過ごすことが多い。今朝も少し早く起きて窓を開け音楽を小さく流していたんだけど、途中ボリュームを上げざるを得なくなった。夏の日差しと共に反応し始める蝉の声のせいだ。いやー、本当にシャワシ…

AORの風 1980

初夏の風が吹いている。梅雨の季節だけど、この時期の晴れた日のさわやかさは格別だ。まだ朝晩は寒いくらいだし、昼間には気温も上がるけど、冷房を入れるほどでもない。開け放した窓を風が抜ける。心地いい風だ。 気持ちまでリフレッシュされるような空気の…

ソロピアノブームの先駆け

「えらく早い梅雨入りだな」なんて思っていたら連日ほとんど雨が降らず、「今年は空梅雨かな」なんて嘆いているとドカ雨が降る。最近の気象の劇症化は目に余るものがあるが、こればかりはどうしようもない。やはり地球温暖化の影響なのだろうか... 降り続…

How Do You Keep The Music Playing

シモーネ・コップマイヤーは、1981年オーストリア生まれのジャズ歌手だが、ちょっと鼻にかかった歌声と、程よく力の抜けた感じが僕は結構好きで、翌日が休みの日の深夜、その歌声にそっと聴き入ることがある。特に2004年にリリースされた彼女のセカンドアル…

花のワルツ

ツツジの季節ももう終わりなのだろうか。いつの間にか、リビングから見えるマンションの中庭に咲くツツジの花も、目立たなくなっている。連休の頃には、鮮やかな濃いピンク色が一帯を染め上げて、この時期ならではの華やかさを感じさせてくれていた。この少…

高山厳を知っていますか?

この急激な円安はどうかと思うけど、疑心暗鬼の中ではあっても日経平均株価も上昇を続け、日本経済に明るい兆しが見え始めているのは事実だ。ことに円安のメリットを大きく受ける自動車メーカーの回復振りは目覚ましいが、そうした大企業の実態は本当に「進…