Jerrio’s Cafe ~ 気がつけば音楽が流れていた

 店主 Jerrio の四方山話と愛聴盤紹介。ジャンルの壁を越え、心に残った音楽について語ります。

Never Can Say Goodbye

 ここのところ、少し秋の気配が感じられるようになってきたけど、今年の夏はとにかく暑かった。「殺人的な暑さ」という表現を僕もよく使ったが、大げさではなく文字通り危険な夏だった。

 今日で猛暑日37日。この当たり前のように使っている猛暑日という言葉、実は3年前に使われ始めた言葉だと聞いて驚いた。そのあたりから気候は劇症化してきていて、災害の危険ももちろん大きいけれど、日本人特有の情緒にまで影響を与えてしまうんじゃないかと、心配になってくる。

 この狂った暑さの中で、この夏一番聴いたアルバムが、トレインチャの 『ネバー・キャン・セイ・グッバイ』 だ。

 春先に梅田マルビルのタワーレコードで、何の予備知識もなく、「試聴、即買い」で入手した。ジャケットにあるアルファベット(Trijntje Oosterhuis)からは読み方がよくわからないトレインチャ(トラインチェと呼んでいる人も...)はオランダの国民的女性シンガーで、このアルバムはジャズの名門 BLUE NOTE レーベルから出ている。内容は、昨年亡くなったマイケルジャクソンのトリビュートアルバムである...ということなどは、全て購入した後で知ったことだ。

 構成はいたってシンプルで、基本はギター一本とバックコーラスのみ(一部、キャンディーダルファーのサックス入り)。このレオナルド・アムエドの弾くギターがすばらしくいい。変幻自在なアコースティックサウンドとコーラスの上を、伸びやかではあるが少しハスキーがかったトレインチャの声が時にしっとりと聞かせ、時に躍動的に飛び跳ね、その構成を感じさせないほど、ピリッとして充実した音楽を作っている。

 マイケルジャクソンのアルバムは数枚持っているのだが、それほど聴き込んでいるわけではないし、ファンというわけでもない。それが良かったのかもしれないが、最初から全く違和感なく聴けた。すばらしいのは、知っている曲であっても、それは既に完全にトレインチャの音楽になっている、と感じさせることだ。選曲の妙もあるのだろう。恐らくジャクソンファイブ時代の曲など、あらゆるマイケルの楽曲から練りに練って選んだに違いない。そこからはマイケルの音楽に対する思いや理解の深さが十分に伝わってくる。それを聴く僕たちにも、楽曲自体の良さを十二分にアピールしていて、逆にオリジナルを聴いてみたい、と思わせてしまうほどだ。

 とにかく今年の暑い夏には、一服の清涼剤として何度も支えてもらった。もう十分僕の中では忘れられない名盤になっている。

 

P.S. 僕の手持ちのCDは欧州版ですが、日本版や米国版は名前のアルファベットは Traincha となっているようです。たしかにこれだとそう読むしかないですね。

 

 

<関連アルバム>

ネヴァー・キャン・セイ・グッバイ+1

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