Jerrio’s Cafe ~ 気がつけば音楽が流れていた

 店主 Jerrio の四方山話と愛聴盤紹介。ジャンルの壁を越え、心に残った音楽について語ります。

セルフカバーはこうでなくっちゃ

 カバーブームが続いている。日本の音楽シーンの話だ。

 先日、よく行くショッピングモールの中にある、わりと大きなCDショップで、出たばかりのJUJUのカバーアルバム 『Request』 を聴いてみようと思い立ったが、品切れ入荷待ちでしばらく入手できないということだった。CDショップ自体は集客力が目に見えて減っている中、カバーアルバムで品切れとは...と一面感心した。

 要因はいろいろ思い当たるが、聴くポイントが変わってきたのだとすれば大歓迎だろう。海外のポップスの世界では当たり前のことだし、音楽を発信する側の独自性を聴くのであれば、それは楽曲だけでなく、表現に重きが置かれてもなんら不思議はない。

 さて、今日紹介のアルバム、バリー・マンの 『ソウル&インスピレーション』 は、カバーはカバーでも提供楽曲によるセルフカバー集である。この手の秀逸なセルフカバーといえば、僕の場合、尾崎亜美を思い出すのだが、今日は洋楽の話だ。

  ★ Album:Soul & Inspiration (2000) / Barry Mann

 おそらく発売直後のことだったのだろう。輸入盤だったので何の情報も無い中、ジャケットを手に取った。見ると俳優のロビン・ウイリアムズかと思わせるおっさんが、Tシャツにセーターで腕組みをして笑っている。えらいラフな格好、お金のかかっていないジャケットだ。

 うーん、知らないなー、と、よくよく曲名が書かれた裏ジャケットを見てみると、このおっさん、ただものじゃない、とわかる。1曲目はキャロル・キングがハーモニーで加わっている。2曲目がマーク・ジョーダン、3曲目はブレンダ・ラッセル、その後、リチャード・マークス、ブライアン・アダムス、ダリルホール、ピーボ・ブライソン...と続く。全員、ハーモニーボーカルかバックグランドボーカルであって、これらの大物がみんな脇役なのだ。もう、この時点で「買い」である。

 そしてさらに見れば、9曲目「Just Once」、11曲目「Somewhere Out There」。どちらもジェームス・イングラムが歌った僕の大好きな曲だ。「Just Once」はクインシー・ジョーンズがアルバム 『愛のコリーダ』 の中でソロデビュー前のジェームス・イングラムを見出し起用した曲、「Somewhere Out There」はスピルバーグ総指揮で作られたアニメーション映画「アメリカ物語」の主題歌でリンダ・ロンシュタットとのデュエット曲であり、どちらの曲も、聴けば様々な思いが噴出してしまう忘れられない曲だ。何者かはわからないが、とにかく購入することにした。

 こういう場合、だいたいは期待の方が大きく、聴いてみると、「...ふ~ん...、あっそう。」ということが多いのだが、この一枚は全く違った。全曲聴き終え、なんとも言えない幸福な気持ちに包まれた。CDは毎月よくわからないものも含め10枚以上は買ってしまうが、こういうことがあるからやめられないのだ。

 バリー・マンは60年代からソングライターとして活動、本人もソロデビューを果たす。奥様のシンシア・ウェイルとのコンビでの提供楽曲は数々のヒットを飛ばし続けるも、ソロのアーティストとしては鳴かず飛ばずだった。本人は80年制作のアルバムを最後に作曲活動に専念し、前述の楽曲をはじめ、大ヒット曲を生み出し続け、「Somewhere Out There」ではグラミー賞も獲得している。

 このアルバムは、彼の音楽活動を総括した20年ぶりのセルフカバーアルバムだったのだ。(もちろん、奥様も含めてです。)

 まず感じたのは、バリー・マンの声のよさ。滋味あふれるシブい声だ。そして、大物シンガーたちと渡り合うその歌いっぷりの良さ。何故この人がソロとして売れなかったのか、納得がいかない。いや待てよ、このとき彼は61歳。この熟成された大人の音楽を世に問うには、この歳月が必要だったのだろう。そう思うしかないほど、堂に入った素晴らしさだ。

 そして何より素晴らしいのは、この珠玉の楽曲たちを、飾り立てることなく、最小限の音と声だけでシンプルに歌い上げていることだ。基本はピアノ等の彼の弾き語り。その上に、必要最小限のストリングスなどの音が乗る。編曲も華美になることなくコンパクトにまとめている。そう、そのジャケットのたたずまいそのものの音楽なのだ。

 聴く前は、少なくともジェームス・イングラムの2曲を超えられるはずがない、と思っていたのだが、バリー・マンは決して乗り超えることなく、脇の方の見えないところから別の方法であっさりと天空に上ってしまった。フルコースの凝りに凝ったフランス料理の横で、やっぱり肉はポン酢でしゃぶしゃぶに限る、と唸っているようなものだ。(変なたとえですみません...)

 楽曲の良さはいまさら言うべくもない。聴き覚えのある名曲がこれでもか、これでもか、と並び、「参りました、許してください~」と、ひれ伏したくなる。

 楽曲と声。素材の良さだけが引き立つ構成と編曲。オリジナル曲と歌い手に敬意をはらい、素材のみを聴かせる。大人のたたずまいのこの一枚を聴きながら、僕もこうありたい、とつくづく思ったのでした!

 

 

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