Jerrio’s Cafe ~ 気がつけば音楽が流れていた

 店主 Jerrio の四方山話と愛聴盤紹介。ジャンルの壁を越え、心に残った音楽について語ります。

Reflection Eternal

 あなたの音楽にはじめて触れたのはいつのことだろう。あるいはその前から出会っていたのかもしれない。当時の僕は仕事を通してもどこかであなたとつながっていたはずだ。

  『Modal Soul』 。このアルバムが僕の手元に落着き、初めてあなたを認識した。たぶんヒップホップなのだろう。でも僕にはスピリチュアル・ジャズに聞こえた。いやそれは、ジャンルを超えた印象派音楽に思えた、というのが正しいだろう。Nujabesという名前を、「ヌジャベス」と呼べるようになったのはその後のことだし、その名前が、あなたのペンネーム・瀬葉淳の逆読みであることを知ったのは、さらにずっとあとだ。

 あなたも書いているように、その音楽があなたの心象風景だろうことはすぐにわかった。そして僕は共感した。あなたは「波」や「振動」という言葉で、その内なる感覚を表現し、外の世界の「音」を、「波」の先にある「音楽」という形に結んでいた。そのミニマルなメロディーや音楽の流れは、ある瞬間に確かに僕の内側に鳴っていた心の音に近かった。それは雄大な自然の営みの中にひとりたたずむときの畏れに近い感覚。あるいは遠く離れた見知らぬ土地で感じる、じんじんするような郷愁に近い感覚。それを形にしてくれていた。あなたなりの表現で。

 昨年11月、店頭で久々に"Modal Soul"というタイトルを目にした。『Modal Soul Classic Ⅱ dedicated by Nujabes』 (Nujabesに捧ぐ)。それはコンピレーションで、あなた自身のアルバムではなかった。その横にあった「天国にいるNujabesへのメッセージ」という文字に目を疑った。僕自身の環境の変化から、その後のあなたの音楽を追ってはいなかった。仔細はわからないが購入し、インターネットで調べ、全ては明らかになった。 

 

 瀬葉さん、あなたがこの世を去って今日でちょうど一年になります。そのことを知った後、僕はあなたとの時間を埋めるように、あなたの音楽を拾い集めました。そして、あなたの内側の波を、確かに感じることができました。それは何者の真似でもなく、あなた自身のオリジナルな世界だった。その緩やかで暖かく、それでいて、寂寥感の拡がる世界。あなたはこのことを予感していたのかと思わせるような、後姿を感じる世界...

 あなたの音楽に共感した世界中の多くのアーティスト達が、この一年あなたを思い、それを受け継ぐ者として、自分の音楽の中にあなたの世界を広げようとしています。それをまとめたアルバムは、本当にあなたへの思いにあふれています。どの曲も、穏やかな音楽の中に悲しみが透けています。あなたを初めて知ったアルバムで、最も印象的だった「Reflection Eternal」も、この追悼盤に新たな形で入っています。何度聴きなおしても胸が詰まってしまう...

 でも恐らく僕達は、まだまだあなたの音楽に出会えるのでしょう。あなたが残した膨大な音の断片と、あなたが行った表現によって、次の人たちが、あなたをよみがえらせてくれるのでしょう。僕達は今も楽しみに待っています。あなたの確かに感じたものと新たに出会う時を。

 

 

<関連アルバム>

Modal Soul

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