Jerrio’s Cafe ~ 気がつけば音楽が流れていた

 店主 Jerrio の四方山話と愛聴盤紹介。ジャンルの壁を越え、心に残った音楽について語ります。

Autumn Leaves に ときめく

 先週は、まさに「秋~!」というような気持ちのよい天候が続いた・・・らしい。「らしい」ってなんやねん、と突っ込まれそうだが、太陽の出ている間、ほとんど外に出ていないのだから仕方がない。(まあ、囚人並みの生活、とでも言いましょうか...)でも時折出会う外気の流れや窓から覗く高い空は、それだけでも十分心地よさを実感できるものだった。やれやれ、こんな調子じゃ、週末は雨だな、なんて思ったけど...案の定、今日は天気が悪い。んー、女心と秋の空か。 ...あれ? 男心でしたっけ。

 数年前、ある雑誌で「最も聴きたいジャズの曲は?」というアンケート調査を行っていて、その一位が「Autumn Leaves(枯葉)」。うーん、まあ順当というべきだろうか。昨年の10月2日のブログでも紹介したが、僕の場合も、モダンジャズと初めて出会ったときに最も印象に残った曲は「枯葉」だった。

 「順当」と書いたが、よくよく考えてみるとホントに?というところもある。この曲は、ジャズの本場・米国から見れば、外の国、フランスから来た曲だ。しかも元はシャンソンである。そう思ってジャズの人気曲を眺めてみれば、もともとジャズ用に書かれた曲や古いミュージカル曲、映画音楽など、圧倒的に米国産の曲が多い。ということは、ジャズ界のイチローのような曲?...んー、それはちょっと大げさだけど、案外この世界、保守的なのだ。

 1950年代の初頭には、フランスでシャンソンのスタンダードとなっていたこの曲は、その後、米国に持ち込まれ、英語の歌詞がつけられた。さらには、歌の前説であるヴァースの部分がカットされ、シンプルな構成に改変され、55年には、ポピュラーピアニストのロジャー・ウィリアムズがインスト版で全米チャートNo.1を獲得。スタンダードナンバーとなっていった。

 ジャズの世界では、1952年、スタン・ゲッツが録音したのが先駆けだったらしい。さて秋も深まりつつある今宵(と言っても、このあたりではまだまだ紅葉は先の話だが)、僕が愛聴し、お勧めする「Autumn Leaves」を5作品に絞って紹介しよう。

 そう思って、手持ちのCD類を眺めてみると、あるわあるわ、この曲の演奏は、いたるところにこぼれている。そこで、今ちまたで流行っている「ときめき整理術」に習って、聴いたとき「ときめいた」ことのある演奏に絞って、その中から選択することにする。

 

 まずは1曲目。やはり、僕が初めて入手したモダンジャズのアルバム。昨年も紹介した、ビル・エヴァンスの 『Portrait in Jazz』 からのナンバーにしよう。これは文句なし。その時の演奏に感じた「ときめき」が、その後ジャズを聴き始める原動力になっていった。ビル・エヴァンスのピアノ、スコット・ラファロのベース、ポール・モチアンのドラムスが生み出す心躍るインタープレイに、しばらくの間のめりこみ、ジャズを聴く喜びを醸成させてくれた演奏である。

  ★ Album:Portrait in Jazz (1959) / Bill Evans Trio

 

 2曲目はこれ。ジャズ・トランペット奏者、ウイントン・マルサリスの 『Marsalis Standard Time volume.1』 からのナンバーだ。このアルバムは彼のレギュラーカルテットでの2作目となる作品で、1987年、リアルタイムで入手し聴いたが、当時ジャズの世界に彗星のごとく現れるや否や、その「すごい」演奏技術と崇高な精神に、ため息と揶揄が渦巻いていた頃のピチピチの演奏だ。この「Autumn Leaves」の疾走感には、一聴して釘付けになった。ドラムスのジェフ・ワッツの編曲らしいが、最初の8小節で、1小節を1拍子、2拍子、3拍子、4拍子、さらに5、6、7、8と超絶的にスライドさせる。曲の納まりは、6、4、2、1と落とし、急速にブレーキがかかる。最初に聞いたとき感じた、この変幻自在のドライブ感、不思議な感覚と高揚する感覚は今も忘れない。

 途中、長い中間部があるが、盲目のピアニスト、マーカス・ロバーツをはじめとしたリズムセクションがとにかくすごい。当時まだ20歳代の彼らが生み出す演奏は、ジャズの基本スタイルに則りながらも、新鮮でパワフルで、とにかく激しくときめいた演奏である。

  ★ Album:Marsalis Standard Time Vol.1 (1987) / Wynton Marsalis

 

 3曲目はピアノソロ。マッコイ・タイナー、1989年のソロアルバム 『Revelations』 からのナンバーである。これもリアルタイムで聴いて、グッとときめいた。当時、フュージョンが下火になり、ストレートなジャズが盛り返してきた頃で、彼は表舞台に現れ、精力的に様々なミュージシャンとコラボレーションし、往年の演奏からさらに進化した演奏を聴かせてくれていた。そんな彼のピアノソロのアルバムが出るということで、迷うことなく入手したアルバムである。しかし、その寛大で繊細で、輝きに満ちた彼ならではの演奏には、ただただ敬服するばかりだ。

  ★ Album:Revelations (1988) / McCoy Tyner

 

 4曲目はボーカル・アルバム。歌ものの「Autumn Leaves」も数多くあるが、やはりこれ!歌といっても歌詞のないスキャット演奏、サラ・ヴォーンの 『Crazy and Mixed Up』 からのナンバーだ。このアルバムは日本では「枯葉」というタイトルで発売されたが、「枯葉なんて入ってないじゃないか!」と返品が続出した、という逸話がある。それくらいフェークされた演奏で、普通の「枯葉」を期待すると、聴き逃してしまうかもしれない。とにかく自由でおおらかで、ジャズの精神を心から感じさせ、ときめかせてくれた一枚である。

  ★ Album:Crazy and Mixed Up (1982) / Sarah Vaughan

 

 5曲目は、言わずと知れたあのアルバム!やはりこれを外すわけにはいかないでしょう。そう、キャノンボール・アダレイの 『Somethin’ Else』 からのナンバーである (と言ってもほとんどマイルス・デイビスのアルバムみたいだが)。このジャズ初心者に誰もが勧めてくれるアルバムを初めて聴いたとき、一曲目の「Autumn Leaves」の前奏部分でなんだか古臭い感じがして、「本当にこれ、そんなにいいアルバムなの?」と疑心暗鬼で聴き進めたが...いやはや、そんなもの、マイルス・デイビスのミュートでのメロディーが始まるや否や、吹っ飛んでしまった。キャノンボール・アダレイもいいソロを聴かせてくれる。4ビートにしっかり乗ってスイングする、心の芯に響く演奏。そう、やはり、名演・名盤だった。

  ★ Album:Somethin' Else (1958) / Cannonball Adderley

 

 さて、泣く泣く5曲に絞ったが、涙を飲んで外したのが、キース・ジャレット・トリオとチック・コリア・アコースティックバンドの演奏。なんでやねん!というお叱りは甘んじて受けますです。はい。

 しかし、なんですねー。今思い出したけど。これと同じようなことを確か90年代の初め頃に、友人に向かってやったことがある。思うに、今日のセレクトと同じ。ということは、それ以来、そのとき以上にときめかせてくれる演奏に出会えていない、ということになる。あ~、ジャズ界が変わったのか、僕が鈍感になったのか。わかりません!誰か教えてください!

 

 

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