Jerrio’s Cafe ~ 気がつけば音楽が流れていた

 店主 Jerrio の四方山話と愛聴盤紹介。ジャンルの壁を越え、心に残った音楽について語ります。

冬の休日

 寒い。とにかく寒い。昨日も今日も、朝一番は太陽の光がいっぱいだったので、ついだまされて窓を開けると、待ってましたとばかり強烈に冷たい外気が忍び込んできた。やがて太陽の光にも力が無くなり、気がつけば曇り空になっている。そんな中、綿雪がちらちら舞っていたりして、窓の外のシクラメンも、風に揺られて心なしか寒そうだ。ま、当たり前かな。今日は旧暦の1月8日。先週の日曜日が元日だったしね。

 この冬は、考えなきゃならないことがたくさんあって、そんなときでも、ふっと力を抜く時間が欲しいと思う。形ばかりだとしても「休日」と名がつけば特にそんな感じだろうか。さっと頭を切り替えて車に乗り込み、小一時間走った後にお茶やお昼をして帰ってくる。再びまた迷宮の中に戻る時には、少しだけリフレッシュされている。

 そんな感じで、先々週の日曜日、思い立って久々に訪れた奈良の著名なカフェ「くるみの木」で、いい感じのティータイムを過ごせた。相変わらず混んでいたけど、席待ちの時間は併設の雑貨店「Cage」やベンチのある庭で過ごせば苦にはならない。薫り高いコーヒーや甘いものを少しだけ味わい、とてもいい気分になれた。

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 その時、一度お昼を食べに来ようよ、なんて話してたんだけど、先週の祭日、またまた思い立って「くるみの木」に2週連続で出かけてしまった。11時前に着いて、お昼の予約表に名前を書き、そのまま数キロ離れたところにある姉妹店の「秋篠の森」のギャラリー「月草」へ。12時半頃に戻って、とてもヘルシーで美味しいランチをいただき、さらにはキッチンで使う雑貨を数点とドレッシング、何故かきっちり品揃えされていた naomi & goro のボサノバのCDを2枚購入。とても満ち足りた気分で自宅に戻った。

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 今では、ここまで隙が無いとは言わないまでも、同じような雰囲気のカフェや雑貨店は結構ある。しかし驚くのは、この今風の「くるみの木」が、なんと26年前に開店したという事実であり、こんな結構不便な場所に、恐らく今のカフェ&雑貨ブームの先駆けとなるようなお店がつくられたことである。

 そんなことを思いながら、座席からお店の中を色々眺めていたんだけど、妙に落ち着くよね、これって一体何だろうね、って話をしていた。まあそこで働く人たちから滲み出るこころざしや、インテリアや建物も含めた雰囲気かな、と言われればそれまでなんだけど、それにしても懐かしい落ち着いた気分。かつて、雪の降っている寒い冬に、隠れ家的な喫茶店で、じっくり腰を落ち着けてココアを飲んでいたときのような、そんな気分。(今はココアは飲みませんが...)

 うーん、と考えて気付いた。においだ。この匂い、なんだか懐かしいよね。これって...石油ストーブの匂いなんだっけ。そうそう、そんな匂い。最近は、エアコンとファンヒーターで、ほとんど電化されていて、こんな匂いのするお店、久しぶりだよねってことになった。そう思うと、今度は薪ストーブのある場所に行ってみたくなる。さて、どんな感じなんだろう。

 

 ということで今日の一枚。とりあえずnaomi & goroは、もうちょっとシーズンまで取っておくとして、あれ?くるみの木って、音楽鳴ってたんだっけ...う~ん、ちょっと思い出せない。もしも何か音楽がかかっているとすれば、とてもオーガニックなイメージのものなのだろう。いわゆるジャズらしいジャズではないだろうな。

 でも今日は気分にまかせてジャズの愛聴盤から選ぼう。このアルバムはどうだろうか。あまり違和感はないかもしれない。ジョー・パスのジャズギターによるソロアルバム、『ヴァーチュオーゾ』 だ。さて、どうでしょう。

 このアルバムの録音は1973年。当時のジャズの世界はエレクトリックなアプローチが台頭し、まさにフュージョンが幕を開いたばかりの頃だが、一方でピアノのソロアルバムがたくさん制作されたのもこの時期だ。1970年のビル・エバンスの 『アローン』 や1971年のキース・ジャレットの 『フェイシング・ユー』 あたりを皮切りに、チック・コリア、ダラー・ブランド、マッコイ・タイナー等、僕が持っているだけでもその頃発売されたピアノ・ソロのアルバムはたくさんある。しかし、ジャズ・ギターのソロ・アルバムというと、なかなか珍しい。まあ、それだけ超絶技巧やアイデアを必要として、誰にでもできる代物ではなかった、ということなのだろう。

 このアルバムでジョー・パスが使用している楽器はギブソンのES-175という名器だが、通常はアンプを通して弾かれることが多いこの楽器を、アンプを通さず、アコースティック・ギターとして用いている。それゆえに、通常のジャズ・ギターやアコースティック・ギターの演奏とは一味違ったシャカシャカした音で、最初こそビックリするものの、慣れてくればこのアルバムの醸し出す飾り気のない独特の雰囲気を生み出す要因であることに気付き、だんだん病みつきになってくる。

 スタンダード曲をリラックスしながら一気に演奏する、そのあきれるばかりの演奏能力に圧倒される一枚だが、あえて3曲、挙げるとすれば、冒頭からその後に続く世界を予感させてくれる「Night & Day」、休日の午後を思わせるような穏やかな名曲「Here's That Rainy Day」、アップテンポでの盛り上がりが印象的な、「All the Things You Are」あたりだろうか。まあ、他のどの曲も素晴らしく、統一感のある雰囲気の中で、ジョー・パスの世界を作り上げている。いやー、名盤です。

 さすがに3週連続は行かなかったけど、外はまだまだ寒くてちょっと暖かい気分に浸りたくなる。寒いうちは花粉もあまり飛ばないだろうから、いいといえばいいんだけど、今日は家でそういう気分にでも浸ろうかな。ちょっと暖かな気分になる音楽でもかけながら、ね。

  *** 「くるみの木」の本もぜひ

 

 

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