近頃、夜にめっきり弱くなってしまった。夕食時にアルコールでも入ればなおさらだ。おなかが膨れれば一日の疲れがどっと押し寄せ、全身の活動が緩慢になる。外ではそんなことも無いんだけど、自宅だとテキメンだ。そういう時、あぁ、年を取ったんだなあ、と思い知る。
夕食が終われば、やがて一人の時間に移行し、本を読んだり音楽を聞いたりしていた。楽器を弾くのも創造的活動をするのも、この時間だったんだけど・・・今や、なかなかそうはならない。すぐに眠くなる。頭が働かない。気分も乗らない。そのうち、まあそういうことは朝やればいいや、朝は早くから目が覚めてるんだし、などと思うに至って、ハタと気づいた。これって、夜型人間が年齢とともに朝型人間に変貌するっていう、典型的なアレなのか? ・・・うーん、考えないようにしようっと。
朝型の生活になるからといって、好みの音楽まで朝型になるわけではない。やはりどう考えても夜型偏重だ。例えば昨年来、何度も聴き倒しているアルバム、アル―ジ・アフタブの『ナイト・レイン(Night Reign)』はその典型で、さわやかな朝に聴く音楽ではない。彼女はパキスタン出身、ニューヨーク在住のシンガー・ソングライターだが、その帯には「夜を愛した比類ない歌声。夜は静寂であり、癒しである」とあり、まるで朝や昼を拒絶するかのような書きっぷりである。
それにしてもクセになるアルバムだ。冒頭の曲「Aey Nehin(彼はこない)」から、もう鷲づかみにされてしまった。ミニマルな音の流れにはスマートでありながらエスニカルな要素が散りばめられ、その上に乗るアル―ジ・アフタブの声をより一層神秘的にしている。
3曲目の「Autumn Leaves(枯葉)」にも驚いた。彼女はバークリー音楽大学を卒業していて、ジャズは唯一きちんと勉強したジャンルだというが、一瞬原曲を見失うような、幻想的な演奏だ。途中入るジェイムズ・フランシーズのキーボードは、現代感覚に溢れていて、不思議にマッチしている。
このアルバムに先駆けて先行配信された7曲目の「Raat Ki Rani」は夜にしか咲かないジャスミンの花の名前で、日本語タイトルは「夜の女王」。もう、徹底的に「夜」なのである。
彼女は、前作に引き続き、このアルバムで今年のグラミー賞の「ベスト・オルタナティヴ・ジャズ・アルバム」に、楽曲「Raat Ki Rani(夜の女王)」で「ベスト・グローバル ミュージック・パフォーマンス」にノミネートされたが、今年は受賞できなかったようだ。
ところで、僕自身、夜型の音楽をいつごろから好んで聴くようになったのだろう。それはおそらく20歳前後で、多少Jazzらしい音楽を聴き始めてからだろうか。中高生時代に聴いていた音楽からは、夜型の音楽はあまり思い浮かばない。あの頃は持っていたアルバムも少なくて、夜、自室で聞いていたのはもっぱらラジオだった。深夜放送全盛の時代、音楽を聴くというより、パーソナリティーの語りを聞くのがメインで、ヤンタンにヤンリク(ヤングタウン、ヤングリクエスト)、オールナイトニッポン、パックインミュージックと、いつ勉強してたんだっけ、と思えるほどだった。
そうした中でも、あの頃印象的だった「夜聴く音楽」として頭に浮かんできたのは、映画「ひまわり」のテーマ曲だ。この曲は、確か谷村新司のヤングタウンの終盤、リスナーからの手紙を読むコーナーで毎回流れていた気がする。
その番組のおちゃらけた雰囲気は、毎回この音楽とともに一変した。谷村新司があのやさしい声で、リスナーからの長い手紙を読み進める時間。その内容は少し悲しいものが多かった気もするが、僕にとっては「深夜への入り口」を示す曲で、まさに「夜聴く音楽」だった。
そういえば、10年ほど前に話題になった、タイトルがそのまま『夜のアルバム』というジャズアルバムもあった。一昨年末に亡くなられ、今何かと話題の八代亜紀がリリースした初のジャズアルバムだ。
プロデュースとアレンジは、元ピチカート・ファイヴの小西康陽で、それはもう見事にジャズだった。若い頃、クラブシンガーとしてキャバレー回りをしていた彼女は、当時はジャズのスタンダード曲も歌っていたとは聞いていたけど、アルバムが出た時点で触手が動いたのは、多少怖いもの見たさもあったかもしれない。さすがと言えばさすがだけど、意外性は全くなかった。「舟歌」の八代亜紀のままで、しっかりジャズだった。
ところで、いつもなら眠くなってもいい時間に書いてるんだけど、一向に眠くならない。そういえば、今日はアルコールが入っていない・・・ひょっとして年のせいじゃなくて、アルコールのせいなのか?!
んー、まあ、そういうことにしておきたいところですが・・・
<追記>
映画「ひまわり」のテーマ曲、どんなんだったっけなー、と思い出しながら口ずさんでみると、気が付けば「いい日旅立ち」になっていました。おいおい、似てるやんか。
その後、八代亜紀の『夜のアルバム』を聴いているとき、曲の冒頭から「おどまぼんぎりぼんぎり」と、ジャズらしからぬメロディーが。そうそう、なんか知らんけど「五木の子守唄」が入ってたな、と思ってタイトルを見直すと「五木の子守唄 ~ いそしぎ」とある。すっかり忘れてたけど、途中から映画「いそしぎ」のテーマ、僕の大好きな「The Shadow of Your Smile」になるのだった。初めて聴いた時は特に気にしてなかったけど、この2曲、似てるやんか。というか、いっしょやん。とっても小西康陽的でした。
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