Jerrio’s Cafe ~ 気がつけば音楽が流れていた

 店主 Jerrio の四方山話と愛聴盤紹介。ジャンルの壁を越え、心に残った音楽について語ります。

Winelight

 連休を迎えると、早く寝るのが惜しくて、ついつい夜更かしをしてしまう。平日は5時起きなので朝型人間のような錯覚に陥るんだけど、休みが続くとすぐに化けの皮がはがれるってわけだ。

 日付が変わってしばらくたつと、妙に喉が渇いてきて、少し濃い目につくった流行りのハイボールを口にする。懐かしいスモーキーな香りに包まれいい気分になると、ついついこの一枚に手が伸びる。グローバー・ワシントン・ジュニアの 『ワインライト』 だ。

  ★ Album:Winelight (1980) / Grover Washington, Jr.

 このアルバムを聴くと、いつも瞬時に「あの頃」に引き戻されてしまう。 80年代に入ったばかりの福岡市内。安アパートを借りて一人暮らしをしていた貧乏学生時代なのだが、拡がるのはその日常とは少し違った光景だ。友人から拝借した白いセリカで、赤坂あたりの並木通りをすべるように走りぬける時。真夜中のパブで、冴えた耳の感覚とは裏腹に、ぼんやりと煙の行方を追う時。ブルーの電飾に浮かび上がった店内で、向かい合わせの彼女と二人、まだ見ぬ未来を前に漠とした不安に包まれ寡黙になる時。引き戻される場面はいつも夜だ。このアルバムに昼の光は似合わない。

 当時、西鉄大橋駅の西側ビルに「LA Rainclouds」という店があった。店内には話題の大画面レーザーディスクが設置され、ウエストコーストの音楽が流れていた。まだまだ「あこがれ」が通じる頃のアメリカの雰囲気をいっぱいに詰め込んだ店で、バドワイザーを片手に僕が聴いていたのは、大人への坂道を歩くヒタヒタとした足音のようなものだったのだろう。あの頃はこういった雰囲気の店がたくさんあって、海外でエアチェックしたクロスオーバー系のFM放送をそのまま音源として流しているような店もあった。アルバム 『ワインライト』 はそういう場所での定番だった。

 このアルバムのB面2曲目(CDでは5曲目)には、名曲 「Just the two of us」 が入っている。グローバー・ワシントン・ジュニアはサックス奏者だが、この一曲だけはビル・ウィザースをフィーチャーした歌もので、この種の音楽としては異例の大ヒットとなり、ビルボードの総合シングルチャートを2位まで駆け上った。大ヒット曲とはいえ、決して浮いた存在ではなく、アルバム自体の持つ単一のトーンをしっかりと下支えしている。

 当時僕はこの曲でソロをとる、ロバート・グリーニッジ奏するスティールドラムのなんとも不思議な音色にはまってしまった。後年、仕事でこの楽器の音を扱うことになるのだが、その時点ではどのような楽器なのか皆目わからない、心躍るパーカッションサウンドだった。

 リチャード・ティーが奏でるフェンダーローズがただよい始め、バスドラの音が鋭くテンポをつくると、一気に世界は組み上げられていく。静かに、やさしく、だけど一気にだ。音楽の中にきらめく空間が丹念に組み上げられる。マーカス・ミラーのベースラインが歌いはじめ、ビル・ウィザースの少し控えめな節回しを追うように、グローバーは節度を持って吹きまくる。この世界はいま聴いても全くくすむことなくきらめいている。

 グローバーリチャード・ティーももうこの世にはいない。でもこのアルバムは、僕の most favorite album として、いつまでも輝きを失わない。

 

<追記>

 ロバート・グリーニッジのスティールドラムのソロはシングル盤ではカットされていますので、アルバム・テイクでどうぞ。

 

 

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