Jerrio’s Cafe ~ 気がつけば音楽が流れていた

 店主 Jerrio の四方山話と愛聴盤紹介。ジャンルの壁を越え、心に残った音楽について語ります。

やっぱりジャケットって重要です!

 ゴールデンウィークもほぼ終わり、少しずつ気分を戻すべく、大量にたまった仕事メールなどを処理しつつ、ぽつぽつとリハビリを開始している。

 今年は最後まで予定を立てる気分にならない休みだった。途中いろいろ考えたが、結局近場に出かけただけになってしまった。その中でも2日ほど出かけた大阪梅田の中心地は、5月4日の大阪駅リニューアルオープンに合わせ、周辺の百貨店や商業施設もリニューアル・開業が目白押しで、ちょっとわくわくしてしまうような新しい街へと変貌しつつある。既に予兆はあるが、人の流れが大きく変わっていくのではないだろうかと思わせる。僕にとっては、大幅に散歩の候補エリアが拡大したに過ぎないが(当事者たちは戦々恐々なのでしょうが)、しばらくは飽きずに楽しめそうだ。

 前回のブログで、ロイヤル・ウェディングの中継に引っ掛けてエルトンジョンのアルバムを紹介した。その夜、久々に聴いて、やっぱりいいなぁ、と感じ入ったのだが、実はその時もう一枚手にとって聴いたアルバムがある。正確にはその中継では時間切れで流れず、そのあとニュースの中で紹介されたワンシーンを見て、ということなのだが。

 この一枚も、偶然にもUK発だ。ジャケットを見て、このビンテージカーのサイドミラーに2人が写る写真、知ってる!と思う人も多いだろう。僕の愛聴盤の中でジャケットランキングをやれば、恐らく上位に入るだろう一枚、Fairground Attraction の 『The first of million kisses』 だ。

 彼らは、1988年発売のデビュー曲「Perfect」で、いきなり全英NO.1、その後発売した本デビューアルバムも同じくNO.1に輝き、一躍話題のグループとなった。ストリート・ミュージシャンとして鍛えられた女性シンガー、エディ・リーダーを中心とした、トラッドミュージックの響きを持つ、路上発のアコースティックバンドだ。このアルバムでは、ベースをギタロンというメキシコ由来の楽器が担い、他にギターとドラムスというシンプルな構成が中心を成していて、欧州のストリートの香りのする自由な雰囲気の作品を形作っている。

 "Fairground Attraction"とは、欧州で良く見かける移動式遊園地のアトラクションのこと。その名前よろしく、その後世界各地で公演を行ったのだが、セカンドアルバムの製作途中、メンバー間の音楽的対立が原因であっさり解散してしまった、一作きりの幻のバンドなのだ。解散後、何とか製作途中のものに、シングルのB面やら未発表曲やらを取繕った編集盤「ラスト・キッス」が出たが、これをセカンド・アルバムとは言わないだろう。また、後年(2002年)、1989年日本ツアー中、川崎のクラブ・チッタで行われたライブを収録したアルバムも発売されている。

 僕は、このジャケットに吸い寄せられるように、既に解散後の90年代に入って購入したのだが、当時はPOPS系の音楽では時代を先取りするような音ばかり追っていたので、このアルバムをあまり深く聴いた記憶は無い。よく聴くようになったのは、2000年以降だと思う。

 大ヒットした2曲目「Perfect」もキャッチーでいいのだが、シングル曲の中では、デキシーランド・ジャズの雰囲気を併せ持った7曲目「Clare」あたりが僕の好みだ。しかし、こういうハイテンションな曲がこのアルバムの主流ではない。12曲目の「Allelujah」あたりを聴いてもらいたい。緩やかに穏やかに流れる音楽の中に漂う、さわやかで涼しげなエディ嬢の声が、時代に流されない音楽を形作り、このアルバムの隅々にまで敷きつめられている。自由な雰囲気の中で、軽やかに踊るような、幸せを感じるアルバムなのだ。

 購入当初はむしろ音楽よりも、このジャケットの写真家、エリオット・アーウィットに興味が移っていた。インナーブックに、これはElliot Erwitt 1955年の作品と書かれているが、既に80歳を越える御大への最近のインタビューで、このジャケットの写真は決して意図して取ったものではなく、たまたまとった一枚をその25年後にネガで発見したものだ、と答えている。彼の作品には、人物にしても動物にしても、なんでもない写真の中に、はっとするような仕掛けがあり、驚きがあったり笑えたりするものが多い。単に見えるものを撮っているだけなのだが、恐らく彼自身のユーモアあふれるセンスがその瞬間を逃さないのだろうと思う。

 かつて本屋で見つけた彼の写真集が欲しくて手に取ったことがあるが、結構高価で大きな一冊だったので躊躇し見送ったことを思い出す。いまやその作品は、ネットである程度見られるのだが、手元において折に触れ眺めたい衝動に駆られる。

 彼の作品に対する日本での人気ぶりは、この写真がジャケットに使われたことに端を発しているのだろう。CDの棚の隅から、今回また引っ張り出して流すことができたのも、「ロイヤル・キス」から連想されたジャケットのおかげだ。

 やっぱりジャケットって重要です!

 

 

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