Jerrio’s Cafe ~ 気がつけば音楽が流れていた

 店主 Jerrio の四方山話と愛聴盤紹介。ジャンルの壁を越え、心に残った音楽について語ります。

月を見ている

  

月を見ている。

白熱球のように白っぽく輝く満ちた月が、
静かな空に頼りなく置かれている。

その明るさに星は存在感を押さえられ、
月はますます孤独に輝く。

どこからか薄い雲が忍び寄り月を隠そうとする。
しかし今日の月にそんなものは通用しない。
何も無かったかのように月はその形状を保ち続ける。

一昨日、歩きながら見た、低空での赤味がかった大きな月も、
昨日、車の中から見た、気がつけばそこにいるオレンジ色の不安定な月も、
全く同じ月である。

大きな黄色い月と小さくいびつな緑の月。
二つの月が同時に輝く世界の物語は、一連の喧騒の中で終焉をむかえた。
現実の世界には月は一つだけだ。

その満ち欠けは人の命と微妙に連動している。
満月に生まれ、新月に死ぬ。
自然が何よりも大きく人を支配していた時代。
そんな太古の時代から、人はこの空の営みを見あげたのだろう。
今、僕が見ている月と全く同じ月を、
1000年前の僕は見ていたはずだ。

そして1000年後の僕もまた、
同じ月を同じように見あげるのだろう。

悠久の彼方へ飛びゆく魂の行方をたどりながら、
気の遠くなるような世界に思いを馳せれば、
何故か今の営みがいとしく思える。

ベランダの手すりから伝わる冷たい感触が戻り、
月の表面の模様に意識が戻る。
月を見ている自分に現実感が帰ってくる。

ずっと月を見ている。
ひとり見ているその側に、暖かな気配がうっすら漂う。

 

 

 

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