Jerrio’s Cafe ~ 気がつけば音楽が流れていた

 店主 Jerrio の四方山話と愛聴盤紹介。ジャンルの壁を越え、心に残った音楽について語ります。

一期一会だけじゃなく...

 外は大嵐。台風が紀伊半島の東側を通過中だ。さすがに今回は、尖閣諸島から竹島方面に抜けるコースは遠慮して、うんと日本の中心に寄ってしまった。これは何かを表してる?なんて事はなくて、単にそういうシーズンが到来したって事で...しかし、まともに中部、関東、東北と縦断しそうな勢いで、今日はこのあたりの小学校も運動会が中止になったようだ。恐らく東北の方では、明日の年度後半の初日を台風の中で迎えるという、散々なスタートになりそうで...気をつけてくださいね。

 さて、時節柄、何かと出会いや別れが多い時期で、金曜日も例に漏れず送別会だった。と言っても部門が変わったり、勤務地が移ったりするだけなので、連絡が取れなくなるわけじゃないんだけど、仕事上では直接の関わりが途絶えれば疎遠になっていくことも事実だ。

 それでいいし、そういうものだよね、とずっとクールに思ってきたんだけど、何の心境の変化か最近は、本当にそうなの?とも思ってしまう。もっとそういう感じだけじゃなくて、お互いずっと何処かで気になってる、そんな関係の人を増やしていくべきなんじゃないのかな。若い頃はそんなことは考えなくても、本音の部分で交流をしている仲間が多かったので、今でも何処かで気になっていて、時には連絡を取り合ったりって事に自然となるんだけど...うーん、年齢的なものだけじゃなくて、僕自身のスタンスの問題なのかな、と色々考えてしまった。一期一会だけで終わらせていてはダメなんじゃないのかな、なんてね。

 

 今日は朝からそんなことを思いながら過ごしていたのだが、音楽で考えても、ある時期よく聴いていたのに今は聴かなくなり、その後の音楽も消息も全く知らないミュージシャンが結構いることに思い至った。今日はそういう中で引っ張り出してきて久々に聴いて、あーやっぱり名盤だったんだ、と再認識した一枚を紹介しよう。朝日美穂、1998年のメジャーデビューアルバム 『ONION』 だ。

 SMEからのメジャーデビューで、当時はそれなりに注目されていた。入手はしたものの、海のものとも山のものともって感じで、あまり期待せずに聴いたと思う。しかしそのアルバムを一聴して、僕は唸ってしまった。う~ん、これ結構すごい...その随所に僕を唸らせるポイントがあったのだ。

 作詞、作曲だけでなくアレンジや演奏もこなす彼女の才能が、至る所に溢れている。それは曲の良さだけではなく、アレンジセンスだったり、音楽的な嗜好性だったりだが、とにかくスッキリJ.POP!という感じでもなかったのだ。楽曲の作りも音もアレンジも、ひと癖もふた癖もある。しかしとにかくカッコいい。僕はしばらく夢中になったのだった。

 まずは1曲目の「momotie」でノックアウトされてしまった。イントロがアコースティック・ベースでビシッと始まる。そして当時しびれたスネア音。ドラムスが乗ってくる。ギターが重なり、朝日美穂の歌が入る。声はかわいい感じでどちらかと言えばノーマルなのだが、結構上手い。曲もいいが、とにかく当時アレンジがむちゃくちゃかっこよかった。

  ☆ Link:Momotie / 朝日美穂

 3曲目の「唇に」は、アルバムと同時にシングルでも発売された曲で、ちょっとジャジーな雰囲気をまとわせた僕の大好きな曲だ。

  ☆ Link:唇に / 朝日美穂

 もう1曲、10曲目の「しあわせをうたおう」を紹介しておこう。これは、このアルバムの中でも、かなりノーマルなイメージのピアノの弾き語り曲。恐らく彼女の原点は、このあたりなんだろうと思わせる。

  ☆ Link:しあわせをうたおう / 朝日美穂

 この3曲以外にも、それぞれ別種の魅力が詰まったアルバムで、トータルアルバムとしてどの曲も捨てがたく、至る所から彼女のやりたいことがビシビシ伝わってくるような、素晴らしい一枚である。

 実はその期待感の中で、次作の 『Thrill March』 も購入したのだが、その音楽の方向性が僕自身が思っていたJ.POPでの発展形と少し違うように感じてしまった。いわゆる「音響系」というような方向の音作りに少し傾いてきていて、音としては面白いのだが、一般受けを捨てて自分のやりたい方向に突き進んでしまいそうな感じがして、音楽として純粋に楽しめなくなってしまったのだ。結局、そのアルバムはあまり聴かないままになり、彼女の名前も聞かなくなっていった。

 ファーストアルバムの当時は20代半ばだった彼女も、今や四十路に手が届いているはずだ。はて、まだ活動しているのだろうか...ということで、今日は時間もあったのでちょっとその後を調べてみることにした。結果は...

 彼女は2006年に、ファーストアルバムから共にプロデュースやアレンジをしてきたDJの高橋健太郎氏と結婚していた。2002年には自身のレーベル「朝日蓄音」を、恐らく二人でスタート。2枚のアルバムを出している。今ではピアノトリオ形式でライブ活動もされているとの事。そして見つけた彼女のブログを見ると、アルバム作成中の今年6月23日に男の子が生まれて少しお休み中らしい。

 出産の3ヶ月前までライブ活動を続けていたこともブログで知った。なんだか今も元気で活動されている様子を知ると、少しうれしくなると同時に、彼女の「今」の音楽を猛烈に聴きたくなってきた。恐らく少しすればレコーディングに戻ってくるのだろう。発売になれば入手して聴こうと思う。その前に2006年リリースのアルバムも聴いてみようかな。恐らくそこにある音楽は、この15年間の彼女の成長や思いの変化を僕に伝えてくれるのだろう。そう思うと、ものすごく楽しみになってきた。

 最初に書いた、一期一会だけじゃない関係。そう、僕たちが出会う音楽でも、そういう関係でいられるものをどれだけ自分の中に持てるかが、豊かな心持ちでいられるためには重要なんじゃないかな。人間関係も然り。少しずつそういう関係でいられる友人を、そして音楽を増やしていくこと。そういうことができればいいよね、なんて、台風のおかげで、つらつら考えた週末なのでした。

 

 

<関連アルバム>

ONION

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