Jerrio’s Cafe ~ 気がつけば音楽が流れていた

 店主 Jerrio の四方山話と愛聴盤紹介。ジャンルの壁を越え、心に残った音楽について語ります。

ア・カペラの季節

 12月は「ア・カペラ」に限る! なんだかいつも似たようなことを言っているような気もするけど、今日はこう言い切っておこう。「ア・カペラ」はクリスマスに向かう季節に良く似合うと思うんだけど、まあそれは「ア・カペラ」という言葉から、誰のどういう音楽を思い浮かべるかによるのだろう。

 ア・カペラ(a cappella)はイタリア語。直訳すれば「礼拝堂風に」という意味で、元々は教会で歌われる宗教曲の様式を表していたらしい。やっぱりね。一般的な日本人にとって礼拝堂、宗教曲なんていうと、先ずはクリスマスを思い浮かべるんだろうね。その音楽は無伴奏のものが多かったために、イメージ先行で、転じて無伴奏の歌唱全体を指すようになったってわけだ。

 ア・カペラの名盤はたくさんあるが、僕がこの言葉からまず思い浮かべるのは、TAKE6の1989年のテビューアルバム 『TAKE6』 だ。このゴスペルベースのジャズ・コーラスグループは、その後ジャズの範囲を飛び出し、ポップグループみたいになっていたこともあるが、このアルバムは、そのルーツである音楽の詰まったすごいアルバムで、発売当時、とても感激しながら聴いた記憶がある。

  ★ Album:TAKE6 (1989) / TAKE6

 1曲目「Gold Mine」の冒頭は、唯一の楽器音、オーケストラのチューニング風景で始まる。指揮者の催促(指揮棒で譜面台を叩く音)で静まった後に聴こえてくるのは、アカペラのクレッシェンドだ。今でも、この生き生きとしたア・カペラサウンドを聴くと、当時わくわくしながら聴いた気分がよみがえってくる。

 2曲目「Spread Love」の躍動感や、4曲目「A Quiet Place」の清新さもたまらない。彼らの様々な要素がたっぷり詰まったこの24年前のア・カペラ・アルバムは、最強で最高。そして、今の季節に良く似合うアルバムだった。

  ☆ Music:Spread Love / Take 6

  ☆ Music:A quiet place / Take 6

 当時このアルバムを聴き、幸せな気分に浸りながら次のアルバムへの期待に胸を膨らませたものだ。恐らく、多重録音ではなく一発録りで録音されたこれらの演奏は、同じクリスチャンカレッジでの同窓生がベースということもあって、6人の息のピッタリ合った、技術的にも素晴らしいものだった。それはライブでも発揮され、もうほとんどこのアルバムのままのコーラスが展開されたようだ。

 

 ところで、今やポピュラーになった「ア・カペラ」だが、その奇妙な言葉が何を表すのかを僕が初めて知った時の話をしよう。もう30年以上前のことだが、それもやはり12月だった。1980年12月5日。それは大学で初めて迎えた冬だった。

 恐らくこの言葉は、当時日本ではあまり使われていなかったと思う。そんな折、山下達郎がほとんど趣味の領域で10万枚限定のミニアルバム(もちろんLPです!)を出すという記事が音楽雑誌に載った。名義も"TATS YAMASHITA"で、どうも内容は声だけの一人多重録音のようだ。枚数の決まった限定盤ということもあって、僕は迷わず予約をし、そのミニアルバム 『On the Street Corner』 を発売初日に手に入れた。それがその日なのだ。

図1-121209

  ★ Album:On the Street Corner 1 (1980) / Tatsuro Yamashita(こちらはCDです)

  中には山下達郎自身の解説が入っていて、その冒頭に、楽器の伴奏なしで声だけで演奏される音楽を「ア・カペラ」と呼ぶことが書かれていた。不思議な聞きなれない言葉だったが、語感がよく、その日以降、「ア・カペラ」などというモダンな感じじゃなくて、「赤ぺら」というちょっと安っぽい響きの呼び方で、僕の言葉の中にもちょくちょく顔を出すようになっていった。恐らく僕だけじゃなく、一般にその言葉が知られるようになったのも、このアルバム以降だと思う。

 無伴奏のコーラス、ア・カペラにも様々なスタイルがあるが、このアルバムは1950年代から60年代にかけて一般的だった「ドゥー・ワップ」と呼ばれるものを土台にしている。その頃のニューヨーク周辺のハーレムあたりには、楽器を買うお金もないので、路上に集まって4,5人でコーラスをする音楽グループがたくさんあったという。

 『On the Street Corner』 は、そういう場所での音楽、という意味で付けられたタイトルだった。その数年前から、彼の深夜放送を時々聞いていたが、よく多重録音講座みたいなのをやっていた。その集大成かな、と思いながら聴いた記憶があるが、そういう音楽に耳なじみがなかっただけに、僕にとってはとても刺激的な音楽だった。3曲目の「Close your eyes」で吉田美奈子が掛け合いで登場する以外は、基本は一人の声だけで作られたアルバムであり、その後何度も続編が出たが、その最初の一枚だったのだ。

 これからクリスマスにかけて、ますます聴く機会があるであろうア・カペラ音楽。今宵、かつて驚きをもって聴いた当時の気分を思い出し、リビングの隅に飾り付けられたクリスマスツリーのライトでも眺めながら、聴くとしようかな。ホットワインでも飲みながら、ね。

 

<おまけ>

 そうそう、Take6でクリスマスと言えば、やはり3作目にしてど真ん中の彼らのクリスマスアルバムも紹介しておかなくては。1991年リリースの「He is Christmas」から、とってもオーソドックスなクリスマスソング3曲をセレクトしてみました。ぜひ!

  ★ Album:He Is Christmas (1991) / Take6

  ☆ Music:Hark The Herald Angels Sing / Take 6

  ☆ Music:O Come All Ye Faithfull / Take 6

 

 

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