Jerrio’s Cafe ~ 気がつけば音楽が流れていた

 店主 Jerrio の四方山話と愛聴盤紹介。ジャンルの壁を越え、心に残った音楽について語ります。

暦の上では大晦日

 12月に入ったばかりの頃...あ、そうか、まさに「暦の上ではディセンバー」なんやね、なるほどなるほど~と、まだ「あまちゃん余波」が少し残る中で思っていたんだけど...うかうかしているうちに、「暦の上では大晦日」まで来てしまった。例のごとく忙しく過ぎた12月だったけど、月末になって所用で急遽田舎に帰らなくてはいけなくなった。最近はずっと冬の帰省はしていないし、年末の電車や高速道路の混み具合を考えるとそれに立ち向かう元気もあまりない。ひょっとしたら、27日の仕事納め当日なら何とかなるかもと空席確認をすると、これが結構空いている。ということで27日の夜、仕事場から直接新大阪に向かいひとり帰省。3日ほど過ごして昨日大阪に戻ってきた。

 しかしこの3日間の寒かったこと。最近は暖かい冬に慣れているし、大阪だとマンションなのでそこまで寒さを感じないんだけど、久々に体験した冬の実家の木造家屋は、心底寒かった。どうもこの3日間は四国の高速道路でもところどころ雪で通行止めになり、大いに交通が乱れたらしい。そんな状況を尻目にすんなり帰省できて、帰りも逆向きなので、またまたすんなり大阪に戻って来られたわけで、まあ日頃の行いがいいと、こういうところに表れるのではないかと。。。

 昨日まではそんな感じでばたばたしていてお正月の準備も何もしなかったので、今日が大晦日なんていう実感はまったく無い。しかし世間は紛れも無く12月31日のようで、早くから近所のショッピングモールも人で溢れ返っていたようだが、それでもやっぱり、僕の気分はまったく乗らない。例年なら一年の締めくくりの音楽を最近のアルバムからいろいろ選んだりするんだけど、そんな元気もない。というか、入手する新しいアルバムも、以前は購入してすぐに聴き込んで、良いだの悪いだの思っていたような気がするけど、最近は一度聴いてそのままになっていることが多くて、その年の内に大推薦できるアルバムを特定するのは結構難しかったりする。

 

 今日はそういうパターンは完全放棄。数日前から何故かむちゃくちゃ聴きたくなっていた曲から始めることにしよう。寒い冬だというのにブラジル音楽なんだけど、気持ちが素直に求めていたということなのかな。しっとりした曲だしそういうこともあるよね。ということで、その曲とは、ブラジルを代表するミュージシャン、イヴァン・リンスの曲、「ACASO」だ。

 この曲の初出は2001年の彼自身のアルバム 『Jobinando』 だが、昨日大阪に戻ってきて引っ張り出して聴いたのは2010年のオランダ録音版 『Intimate』 だ。

 イヴァン・リンスは今や世界中に多くの信奉者を持っていて、トリビュート盤もたくさん出ている。そんな信奉者の一人、ジャズ・ベーシストのルード・ヤコブスのプロデュースでオランダで製作されたこのアルバムは、タイトルからもわかるように彼を信奉するたくさんのゲスト達との競演盤で、なんとも心温まる豪華なアルバムに仕上がっている。

 このアルバムでの「ACASO」は「No Tomorrow/ACASO」として、ゲストでもあるオランダの歌姫・トレインチャが英語で歌った後、イヴァン・リンスポルトガル語で歌うという趣向だ。

 トレインチャは気持ちよく響き渡る伸びのある声で、この音楽のおおらかな一面を歌い上げている。その後を受け継ぐイヴァンの世界は彼自身の世界だけど、二人の作る音楽に違和感は無い。親密な雰囲気で大きな流れを作っている。

 豪華なゲスト、重厚な編曲と、このアルバムは充実した音楽で満たされているが、それはもう冒頭から全開だ。一曲目の「Tanto Amor」は、イントロからドイツの人気トランペッター、ティル・ブレナーのミュート・トランペットが、ゆったりとしたオーケストラの上に気持ちよく響く。この落ち着いた雰囲気での始まりが、アルバム全体を方向付けているようだ。

 5曲目の「Nosso Acalanto / That’s Love」はテイク6との競演。テイク6の変わらない独特なコーラスワークの上に、イヴァンの音楽が素直に乗って、実にいい味を出している。

 このほかにも、ローラ・フィジーやジェーン・モンハイトなど、たくさんのミュージシャンと繰り広げる世界は、共演者のイヴァンへの思いを十分に感じられるもので、豪華でありながらパーソナルな雰囲気を醸し出した素晴らしいものだ。

 そんな豪華なアルバムにあって、最後の曲「Maos de fado」はイヴァンのピアノの弾き語り。実にシンプルな曲だが、どうも25年連れ添った奥様のために捧げた特別な曲のようだ。この小品を歌うイヴァンの心の込めようはどうだろう。技術だけでは語れない、彼の真髄が詰まっている。多くのミュージシャンに今も尊敬され続ける彼の、本当の理由が見えるような気がする。

 聴き進んでいくうちに、ぽかぽかと暖かな気分になるアルバムだ。だからこの寒い3日間に無性に聴きたくなったのかも知れない。

 

 さて皆様、今年も変わらずご訪問いただき、代わり映えのしない内容にお付き合いいただきましてありがとうございました。もう4年目に突入ということで、回数も130回になります。どこかで大きく転換したいのですが、今しばらくはこのまま続けたいと思いますので、来年もよろしくお願いいたします。

 では、良いお年を!

 

 

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